先週、友人のsちゃんが神戸に来てくれた。
sちゃんは同じ大学で同じ陶プログラムを卒業した仲だが、大学時代はそこまで親しい仲ではなかった。
大雑把に陶プログラムは大きく三つの仲良しグループで成り立っており、私とsちゃんは違う仲良しグループに所属していた。別に仲良しグループ同士で仲が悪いとかではなく、気の合う人たちが集まって自然にできたグループだった。全然話したし違う派閥にしては交流も多かったように記憶してる。
そんな私たちの距離が急激に近づいたのは卒業後のことだった。陶芸を勉強するために私は岐阜にいって、仕事のためにsちゃんは愛知にいった。
お互いよく遊んでいたグループの人間は東京に残っていたから、自然と遊ぶ回数も増えたのだろう。
お互いの中間に位置する名古屋でよく遊んだ。
sちゃんをよく知り思ったのは、自分の意見をしっかり持ってるし、常識もあるし、ノリもいいフッ軽な女性ということ。フッ軽故にたまに神戸にも来てくれた。

まず、Sちゃんと元町のにしむら珈琲に行った。
にしむら珈琲はもともと会員制の喫茶店であったというに相応しい贅沢な空間の喫茶店である。机もガラスのコップも特注で、なんとなくみんなお金持ちに見える。
Sちゃんもすごく喜んでくれた。

その後は、Sちゃんの希望で北野に向かった。
実は近所にずっと住んでいたにも関わらず北野に行ったのは小学生の一度きりでほぼ記憶にない。
思い出っていうものは往々にしてキラキラ補正がかかっているから正直期待せず行った。
北野に行く道すがら、またにしむら珈琲をみつけた。こんな近距離に会員制の喫茶店があるなんて一昔前の神戸はセレブで溢れていたのだろうか。それとも会員制といいつつも会員には誰でもなれて結構気軽に行ける喫茶店だったのだろうか。調べれば一発だが、もう少しにしむら珈琲のことを考えたいので調べないことにする。

北野の異人館外に続く道はまっすな坂道で続いてて、ひたすらまっすぐ行くと最後にちょっとくねった階段がある。
そこを登るとすぐに風見鶏の館がある。ついてみると立派な建物でテンションが上がる。

Sちゃんの希望で風見鶏の館に入ってみる。入場料は500円。自分一人だと絶対入らないので、友達と一緒なのはいいことだ。
館の中も想像より立派でアールヌーボーらしい気品ある内装だった。たぶん小学生の私も入ったはずなのだが全く記憶になく都合よく初めての感覚で楽しめた。
ランプがどれもすごく可愛くて、ランプの話だけで盛り上がれた。幼い私は絶対ランプの意匠なんて気にしなかっただろうし、気づいても盛り上がることはなかったっと思う。こんなところで大人になったんだと感じた。


その時にはもう17時を過ぎていて他の館には入れなかったから、北野をうろうろ散策した。
まさかそんな早く閉まってしまうとは思っていなかったので残念ではあったが、平日にそんな遅くまでやるわけもないか。わたしたちの他には、カップル人組がつかづ離れずの距離で散策しているようだった。
個人的には“うろこの館”が好きだったような気がしたのでいきたかったのだが、門が閉まっていたしうまいこと館が見えない。
くそ〜と思ってたらsちゃんが門の写真をパシャパシャ撮っていた。「上のお花かわいいよ」
上を見てみたら門に可愛いお花の飾りがあった。私の視野はなんて狭いんだろう。

うろこの館から標高はさほど変わらないと思うが、気の向くまま歩いていたら小さな公園が突然現れた。
海側を見るとこの公園より高い建物が見えなくて、神戸で一番高い公園だと思った。もちろんもっと標高の高いところに家が建っているのは知っているが、私がいったことないのでここが一番高い。


小さな公園だったが遊具がひとつあった。滑り台のようだけど、青くて低くてどうやって遊ぶのかよくわからない。滑り台にしては低すぎないだろうか。
でもそのおかげで、後ろに生えている名も知らぬピンクの花のある木が映えてる。

徒歩で行ける距離にこんなにいい場所があったなんて。
“灯台もと暗し”とは今使うべき言葉だろう。
おわり