わたしはある仮説をたてていて、それはノルウェイの森から読むと村上春樹キライになる説である。

どこか妙だと最初に気づいたのは、大学の友人と話していた時だった。
「はじめて読んだのがノルウェイの森で〜苦手なんだよね」待てよ、なんか前にも同じようなこと聞いたことあるなという気がして、記憶を遡ったら予備校の友達との会話を思い出した。
「村上春樹って有名だからノルウェイの森読んだんやけどずっとどろどろしてたわ~うち苦手やな」そのときはふうん、と流していた。この時のことを思い出して、同じことを言うのはやっぱりちょっと妙だと思った。

私は岐阜の学校に通ってることがあって、そこの先生が「おれ苦手なんだよ。ノルウェイの森をはじめて読んだ時おもって〜」いままで気にもとめていなかったことが、突然どうしようもなく重大なことのように感じることがある。この時がまさにそうで、知ってはいけないことを知っちゃった気分になった。けっこうな衝撃でふうん、としか反応できなかった。
この時から私の中に「ノルウェイの森から読むと村上春樹キライになる」という仮説が生まれた。

そのつぎは思ったよりすぐで、岐阜の友達と居酒屋で小説の話になった。わたしは何気なく村上春樹の話に持っていって「わたし苦手なんだよね」と言い終わる前に「ノルウェイの森から読んだんちゃう!?」と食い気味に言った。

4人がノルウェイの森から読んで村上春樹苦手なんだよねって言った。何が起こってるんだろう。
特に関係のない4人が同じ感想を持つのはどう考えてもおかしいだろう。
確かに私が意図的に村上春樹の話をしたのもあるし、はじめて読んだのがノルウェイの森でしたという人が4人出てきてもおかしくない。でもその4人がみんな同じ感想なのはどう考えてもおかしいと思う。



村上春樹好きだという友人は、たいてい他の作品から読んでいて、その人たちはノルウェイの森も良かったと言っていた。ネットで調べてみたらノルウェイの森のレビューは悪くない。
つまり、はじめての村上春樹がノルウェイの森というのが原因なのではないだろうか。



ちなみに私は風の歌を聴け、世界の終わりとハードボイルドワンダーランド、騎士団長殺しが好きだ。乾いた文体でキザなことを当たり前のようにやる村上春樹の文体はキライじゃない。はじめに読んだのが風の歌を聴けでよかったと思う。
だいたいは現実世界と平行世界が次第に混ざっていくストーリーが多いけどノルウェイの森は違うっぽい。

わたしがノルウェイの森を読めば良いんだろうけど、なんとなく次に読むのは羊をめぐる冒険と決めているので、でまだ先になりそう。
私も読んで4人と同じように嫌いになっちゃったらどうしよう。読んでもいないのにノルウェイの森に関する知識を抱えて不安になっている。まだ心の準備はできていない。


おわり

スポンサーリンク