フィルム写真を現像すると、毎回27枚分の忘れていた記憶にボコボコにされる感覚を味わえる。
この写真を見た時、当時のことや、みんなのことを思い出した。



2017年11月26日に私は先輩Tと同期Yと一緒に府中にある東京競馬場へ来ていた。

なぜこのメンバーでいったのか記憶が定かではないが、なんだかんだよく集まるメンバーではある。
先輩Tはひとつ上の学年のグラフィックデザイン学科の学生で、Yはこれまたグラフィックデザイン学科である。

私たちはみな、先輩Tが「可愛い女の子と出会いたい」という不純な動機で設立した【遠足同好会】のメンバーであった。

先輩Tの思惑は見事に木っ端微塵に打ち砕かれ、本来の目的を見失った遠足同好会は空中分解すると思われたが、元々旅行や散歩が好きであった先輩T、純粋な気持ちで遠足を楽しんでいた一部のメンバーが残った。

結局、【遠足同好会】は清く真面目な同好会へと変貌をとげたのだった。

そして私は、初代部長である先輩Tに直々に任命された2代目遠足同好会部だったりする。


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なんで競馬にいったのか覚えていないが、だいたいにおいて先輩Tか私のどちらかが行きたいところを見つけてくる。
ふたりで行くのはつまらんから誰かを探す。

そしてだいたい白羽の矢が立つのはYなのだ。

Yという奴を言葉で表すほど難しいことはない。まず、第一としていい奴。
そして…そして、次の言葉に詰まってしまう。とにかく、いい奴!

遊びに誘ったら、近場でも県外でも来てくれるし、話しているとすごく共感してくれてこちらを気持ちよくしてくれる。

あと、「ハンサム」である。平野歩夢にジャニーズを混ぜたようなにいそうなハンサムボーイ。
ハンサムって大きな要素のはずなのに、Yの場合は「ハンサム」がなんだか掠れる。

ここまで言うと、「ただのいい人ね」と思うかもしれないが、わたしはYをめっちゃ尊敬している。
それは制作への情熱である。私たちが通っている多摩美術大学でも華型であるグラフィックデザイン学科でYはアニメ制作をしていた。
制作について語るYにはきらりと光る情熱を感じるのである。
ただのいい人では決して収まる男ではない。

遠足同好会で何するときは、ふっ軽のYは来るっしょ。となる。

競馬自体は正直覚えていない。
先輩Tが適当に買った馬券がちょっと当たったのだけぼんやり覚えている。


先輩Tと競馬や競艇に行くといつもひとりだけ数千円当てるのだ。
なんだか映画に出てくる美味しいところを持っていくキャラクターみたいな先輩なのだ。

先輩TとY


その後は、映画の【it】を観るために映画館まで歩いた。
しかも、東京競馬場から調布の映画館まで歩いたのだ。

今になっては狂気の沙汰に感じてしまうが、2017年のわたしたちはパワーに溢れていたのか、それともめちゃくちゃに暇だったのか、あんまり気にせず歩ききった。

【it】は言わずもがな名作で、映画終了後はとにかく語りたくて近くの大戸屋に駆け込み、映画の感想を言い合った。

一緒に観た映画の“良さ”を感じれる人と語れる時間ってとても貴重だと思う。

批判や「分かんない」ってのは簡単に語れるが、「ここがこうだからよかった!」と感じた“良さ”を頑張って言語化しようとするのってすごく難しいけど素敵なこと。

【it】は当時みた時の自分の感情含めて好きな作品なのだ。


大学卒業後は当たり前だが、さまざまなことが変化した。
私は地元の神戸に帰ってきたし、先輩Tは学校の先生になったし、Yはアニメ制作会社に就職した。

そして【遠足同好会】は【遠足同窓会】へと進化を遂げた。




おわり