この本を紹介してくれたのは、同じ美術予備校に通っていたTちゃん。私たちは小説が好きでよくお互いのおすすめを紹介し合ってた。

「旅のラゴスって本、面白かったで。たぶん好きやと思う」

予備校終わりには三宮駅前のジュンク堂で画集のコーナーとか小説コーナーとかを徘徊しながら、私たちはいろんなことを話した。
当時のジュンク堂は2フロアあって、上は漫画フロアで下はその他だった。広々としていて、特に画集コーナーには私たちしかいなかった。

そのジュンク堂で『旅のラゴス』を購入した。
平積みにされていて、本の帯には「いま、売れています!!」

何度も読み返してボロボロ


だいたい3日で読み終わったと思う。とにかく面白い。


内容は主人公であるラゴスがひたすら旅をする話。淡々と乾いた文章で”超能力”集団転移””架空の動物”が登場してくる。わからないことや不思議なことが特に説明もなく当たり前のように起こる。

北から南へ、南から北へ。
捕まって奴隷になって、逃げ出して。
デーデと出会って、別れて。

ラゴスの旅の目的が本書では書かれていない。
そもそもラゴスの心情の描写がいっさいない。
結局ラゴスの旅の目的は最後までわからないのだけど、読み終わった後本当に爽快な感動がある。

この本の考察に答えはないだろうけど、
ラゴスの旅はラゴスの人生そのもので、本書の旅は読者の人生そのもの。なのかなと解釈した。

まだ高校生だった私に「人生ってこうであるべきだ」と思わせた。
自分で目的を作って、一人でも行動して、困難にも向き合う。
何も語らないからこそ、勝手に考察して勇気をもらっていた。

ラゴスは思慮深く、人に尊敬される人柄な一方、大胆な行動や勢いに身を任せるところもある。デーデと再会できたのにもかかわらず、また一人で旅を続ける。そんなラゴスに憧れた。

今読んでも、ひたすらに旅をするラゴスの心情はわからない。
でも以上に勇気と感動を貰える一冊なのは間違いない。

筒井康隆の小説の中でも自信を持ってオススメする。

では、また:)