
2022年8月12日に私は熱海に向かうために新幹線に乗っていた。
普段なら、新神戸から乗ると大抵は自由席だろうと余裕で乗ることが可能だ。しかし、8月12日はお盆真っ只中であり、混雑を予想していたのだが驚くほど新幹線は空いていた。

その時、台風は北上しており名古屋あたりをゆっくり進行していた。神戸では雨も降っておらず、台風の気配はまったく感じなかった。
台風が予定通り北上するならば明日あたり、熱海でバッティング予定である。
そもそもなぜ、熱海に向かっているかというと毎年恒例となりつつある「遠足同窓会」の合宿のためであった。
「遠足同窓会」とは、大学時代に先輩Tが設立した「遠足同好会」の現在の姿である。
大学2年ごろには総勢40人をこえるビッグサークルだったが、年を重ねるごとに人数は減っていき厳選されたメンバーのみが残った。
そして先輩T(初代部長)と私(二代目部長)が卒業したことによって、「遠足“同好会”」は「遠足“同窓会”」へと進化した。
部活の内容はいたってシンプルで、遠出してみんなで楽しむだけである。
もう8年の付き合いになるメンバーだから久々に会うといってもワクワク感もドキドキ感も薄れる。と思っていたがいつの間にか、新しい靴を買って汚い金髪を黒く染めていた。
めちゃくちゃ楽しみにしていたのだった。
そんなこんなで新しい靴を履いた黒髪のわたしは、スカスカの新幹線に乗り込んで本を読んでいた。

名古屋〜浜松あたりに差し掛かったとき突然大雨が襲ってきた。まじでバケツをひっくり返したような大雨だ。
こんな時、普通はどう感じるのだろう。「せっかくの旅行なのに台風かよ」とかだろうか。しかし、私はとにかくワクワクしていた。
正直大学時代に散々行った熱海は私にとって目新しいものではないからだ。そこに台風が到来とあっては確実に初めての経験ができること折り紙付きである。
「台風の熱海」
なんだかミステリー小説のタイトルのような重厚な雰囲気を感じる。
しかも泊まるのはペンションだ。こんなのクローズドサークルの完成待ったなしじゃないだろうか。

浜松をでたころにはだいぶ雨も弱まり、台風を追い越したことがわかった。
熱海に到着した時には雨はかなり小降りで傘もいらないほどであった。
私たちはレンタカーで食料をたくさん買い込んでペンションに到着した。
食材、飲み物、ボードゲームが揃えばもう台風を迎え撃つ準備は万端である。
つづく
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